まことさんのやってみるブログ

東京在住の五十歳台おっさんの、やってみたこと・続けていることのご報告です。

【フリートークしてみる】能楽とその公演会のお話

 ラジオのパーソナリティ番組のフリートーク(雑談)のイメージで書いてます。
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 どもども、まことです。
 春到来で、屋外が心地よい、いい時期になりましたね、なんとなくウキウキして出かけたくなってしまいます。今回は、久しぶりに『能楽』の公演に出かけてきたので、そのお話です。

 『能楽』って分かりますでしょうかね、『狂言』の対義語としての『能』、500年以上昔の室町時代観阿弥世阿弥から連綿と伝わる、伝統芸能・演劇です。日本の伝統的ミュージカル、あるいは歌舞伎のいとこ、くらいの説明になるかな。
 能楽の公演はどうやって見るか。ほかの商業演劇公演と一緒です、チケットぴあなりネットなりを見れば、東京であれば毎週末のように公演があちこちで催されていまして、数千円でチケットを買えます。場所は専門施設の能楽堂が多いかな、ときどき『薪能』といって野外で催されることもあります。能楽を習っている素人さんによる公演もありまして、例えば首都圏の大学ならそこの学生による能楽サークルがよくあって、その公演会を見ることもできます。会場には着飾ったご婦人方が多いですが、べつにオシャレ不要です。
 演目は、古典文学や歴史的出来事や神仏来歴に題材をとった、古くからのものが多いです。現代のかたがイチから作った新作の演目もありますが。その題材を、華美な装束(衣装)のシテ(主役)・ワキ(脇役)などの演者や、地謡(独特の節回しのコーラス・ナレーション)や、お囃子(笛・大鼓・小鼓・太鼓からなる楽器伴奏)、その他からなる能楽という演劇のフォーマットにのせて、1時間2時間かけてひとつの演目が演じられます。正式には能の演目五つとその間ごとに狂言の演目が四つで1セットですが、そんな正式は滅多になく、通常は能一つ二つプラス狂言、トータル2時間半から4時間の公演会になります。
 何を楽しみに見るか? 人それぞれでいいかと思います。演劇としての面白さを求める、事前に仕入れた蘊蓄を答え合わせして楽しむ、日本的情緒・価値観に浸る、推しメンを見に行く、寝に行く、好きにしてよろしいかと。あまり分かりやすい表現形態ではないので、海外ミュージカルを見るのと同じ程度の事前学習はしておいた方が楽しめるかとは思います。
 古臭くないか? 古臭いですよ。ストーリーの進行ペースやら、古語主体・独特節回しのセリフ・ナレーションやら、ベースとなる古来からの思想やら、現代の価値観と必ずしもマッチしていないのは事実です。だからどうした、ですが。
 私はこの能に少々ご縁がありまして、能の謡や所作やお笛を数年習ったことがあって、今も能の公演をたまーに見ることがあります。先日2024年3月に東京宝生能楽堂で行われた『響の会』という公演を見てきました。以下はその演目の感想です。素人が上から目線の感想ですみませんが。
 
○大原御幸;
 平家物語の『大原御幸』の段を題材とした演目。シテは西村高夫先生、建礼門院徳子を演じられていました。京都大原の寂光院に隠棲する建礼門院のもとを訪れた後白河法皇に、往時の壇ノ浦の戦いや、実子の安徳天皇ほかの入水を涙ながらに語る、というストーリー。
 華やか・抽象的な舞のパートがほとんどなく、シテの語りや地謡で話が静かに進んでいき、泣くシテの所作(シオリ)が繰り返され、静謐な無常感の伝わる演目でした。しずしずと運び込まれた庵小屋の作り物(小道具)の幕が除かれるとそこからシテ達が現れるという演出にハッとさせられました。女性役のオモテ(お面)と頭巾をつけたシテの姿は美しかった。
 
○川上;
 こちらは狂言、演者はご存知野村萬斎さんと、その父の野村万作さん。話の筋は思い切って省略しますが、笑いの中に、人の身勝手さと優しさ、愛ゆえの自己犠牲と執着、神仏の万能性と非情性、などをつらつら考えさせられる演目でした。というかそういう二面性がテーマなのかな、うーむ。
 シテの野村万作さんはお声はさすがにお年に応じた模様でしたが、所作は上品で自然で円熟味あって、アド(脇役)の萬斎さんよりも印象に残りました。というか萬斎さんはあえて抑えたのではないかな、あんなもんじゃないと思う。
 
 ○猩々乱;
 猩々(酒好きの精霊)を演じるシテがお二人、舞いも特殊な『乱』に差し替え、大きな酒壺の作り物(小道具)使用、というゴージャスな小書き(アレンジ)での演目。シテお二人が華美な装束(衣装)でシンクロして舞い踊る様が見どころで楽しめました。
 ちょっと気になったのは、猩々二人の装束が全く一緒なんですが、現在のダンスなんかを見慣れた目には、かえって所作のシンクロの乱れ(というか個性でしょうね)に気が向いてしまったというか。赤猩々と青猩々とかに大きく変えて所作も個性を強く出したら面白かったかも。
 あとお囃子は、各々の響きといい調和といい緩急といい、大原御幸よりも良かったかと。お笛はご縁のあった松田弘之先生でした、久しぶりに拝見拝聴しました、細くなられたようでしたがお元気そうで何よりでした。
 
 ……皆さんついてこれましたかね。地味な趣味のことをずいぶん長々と語りましたが、『推し活』、『沼』とはそういうものですのでご容赦ください。万人ウケしない趣味だと思いますのでお勧めはまあしませんが、楽しいですよ。
 ではでは。